目立たない司会こそ・・
20年も前のことだ。
「披露宴が終わって、お客様から『司会が良かったね!』と言われたらまだまだだ。
『いい披露宴でしたね!』と言われたら、司会者として喜んでいいぞ」と。
言わんとしていることは重々理解しているつもりでいた。
「目立ちすぎるな!主役は新郎新婦だ、そして登場者だぞ・・」
あれから20年、
私も50の大台を過ぎ、司会生命もあとどれくらいか・・と思うような年頃になって、初めて、鶴賀氏が言わんとする意味を・・、今度は確かに・・実感している。
先日、こんなことがあった。
私と共に結婚式を作り上げているソリストの結婚式。
明るく聡明な彼女が自らプロデュースした披露宴だ。
司会者として心がけたのはただ1つ。
彼女の作り上げる世界を、司会者として邪魔しないように・・。
当日は、彼女の新郎への思い、母への思い、友人への思い・・見事に繁栄された感動的な披露宴だった。
司会者としてのコメント量は、いつもの半分くらいであったであろう。
それは、彼女に<力>があったからだ!
彼女が作り出す雰囲気を邪魔しないように・・、
そして、それに呼応するかのように、今度は列席者が作り出すイメージ・・
それを邪魔しないように・・邪魔しないように・・そう心がけて必要最小限の司会をした。
披露宴が終わった。
出席していたベテランの司会仲間が、私にこう言った。
「司会者ってあんまり意識されないのね・・。私達って自意識過剰なのかしらネ」
私は、(仲澤さんの司会良かったわ!)の一言が、内心は欲しかったが、
でも、それでも、
いや、だからこそ嬉しかった。
鶴賀氏の言うことはこういうことだったのかと・・。
井上陽水のコンサートのバックバンド、そのリードギターの今野氏は、(陽水さんの世界を邪魔しないように邪魔しないように・・)と、最大限の配慮と謙虚さと思いやりを持って、静かにそしてエキサイティングにギターを弾いている。
司会者は、そういう感性を持ってこそ、本当のプロと言えるのではないだろうか。