お辞儀と椅子と壁
H社長はその場の雰囲気作りに長(た)け、聞き上手であり、そしてあくまでさりげく打ち合わせ全体をリードしていらっしゃいました。
トップに立つ方のコミュニケーションの取り方は実に参考になります。
確か<コーチング>も、成功している優秀なリーダー達のコミュニケーションのノウハウを抜粋し、体系化したものと聞いています。
クロージングがまた素晴らしかった。
客人を玄関脇までお見送りし、「お会いできて嬉しかったです」と言葉を添え、客人が庭園を抜けて見えなくなる迄お見送りする。
そして、客人が見えなくなるかならないかの瞬間、深々と頭を下げるのです。その間約1秒半・・。
客人が見ていようと見ていまいと、
今日来て下さってありがとう・・、嬉しかった・・と感謝の気持ちでお辞儀をする。
その心根がなんとも清清(すがすが)しく、私もかくありたいと思った次第であります。
99歳の龍源寺住職 松原泰道氏の御著書の中に次のようなくだりがありました。
満員の予定ががらがらの会場で講演をしなければならなくなってしまい、気落ちした講師に住職はこう諭します。
『壁が聴いている・・、椅子が聴いている・・』と。
・たとえ客人が見えなくとも、その客人に心から感謝の気持ちを添えてお辞儀をする・・
・たとえ聴講者が少なくとも、椅子も壁も聴いてくれていると自身を鼓舞し、聴講者一人ひとりに向けて精一杯の講演をする・・
こういう気持ちを持ちえる人になりたい、司会者になりたいと思うのです。