無視か?シカトか?
どちらが本業?と聞かれたら「両方とも本業です」と答える事にしています。
1週間ほど前の夕方、ウェイターとして50名ほどの<着席ディナー>のサービスをしました。
そこでこんな事がありました。
乾杯直前、客席の一人が右手を高く挙げました。
おそらくウェイターを呼んでいるのでしょう。
私は、乾杯直後の主賓の椅子の介添え(椅子引き)を任せられていたので、何の対応もできませんでした。
そしてそのまま、気が緩んでいたのでしょう、うかつにもそのこと(お客様が手を挙げていたこと)を忘れておりました。
乾杯後、しばらくしてそのお客様は私のところに歩み寄り、
「俺確かに手を挙げて合図したよな!わかっていたのに、無視したよな。シカトしたよな。
普通なら何か御用ですか?とか、お飲み物は何になさいますか?とか聞きに来るよな・・どうなってるの、このホテルは?」と言い寄られました。お客様はかなりお酔いの様子です。
丁重にお詫びしましたが、お客様の不愉快感は消えそうもありません。
5卓の円卓で担当テーブルが決まっています。私は<その方>のテーブル担当です。
(いやぁ、まいったなぁ)
それでも気を取り直して、淡々と自然に丁寧にサービスしました。
お肉のコースも少し進んだ頃、ふとテーブルを見ると、赤ワイングラスが倒れていて、その方の隣りの席のテーブルクロス全体が赤く染まっています。
倒したのはその方だと推測できます。
一瞬嫌がらせかな?と思いました。が、すぐにその思いを打ち消し、とにかくきれいにして差し上げようと思いました。
丁度、そのお隣の方は化粧室に行っていて不在でしたので、その間に何枚かのナプキンを利用して応急処置をしておきました。
サービス全体は、また<その方>の気をもませてはいけませんので、声かけをこまめにして、さりげなく、丁寧に、そして丁寧に、淡々と、スマートに、スピーディーなサービス・・を心がけました。
デザートコース、フィニッシュのコーヒーを<その方>にサービスした時、初めてその方は「ありがとう」とウェイターの私に言って下さいました。
言い訳はせず、淡々と丁寧にサービスしたのが良かったのでしょうか?
ウェイターの私が、<その方>を無視したり、シカトしたりしたわけではなかったことを、わかって下さったのでしょうか?
久しぶりにヒヤヒヤの経験でした。
こういうことがあると初心に戻れます。
こういうことがなくても初心に戻れるようになれば、本当のプロフェッショナルと言えるのでしょう。
まだまだ奥は深いようです。
司会の仕事もウェイターの仕事も、どんな仕事もそうなのかもかもしれません。