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司会のウラワザ

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よりよい人生をめざして                       

一生懸命のその先に

誰もが、つらい、苦しい、やめたいと、時には思うのが「仕事」。
その仕事の苦しさを、より良い人間になるための<修行>と割り切れば、少しは気持ちの整理もつくかもしれません。が、なかなか難しい。

今日は、元帝国ホテル総料理長の村上信夫シェフの人物像を紐解き、仕事に愛着が持てない、仕事が嫌で辞めたいと思っている方々に、少しでも勇気と元気をお伝えできればと思い、整理してみました。先日FM甲府の番組で放送したものを加筆・修正したものです。

村上さんは、帝国ホテルの総料理長を26年間勤め、NHKの「今日の料理」にも出演、ホテルに<バイキング方式>を初めて導入した人、東京オリンピック選手村の94か国、7000人の食事を賄うリーダー「総料理長」としても有名です。


いいコックになりたい・・と村上信夫は、10代で、憧れの帝国ホテルへ。
配属先は、厨房の洗い場。村上は、名人のソースの味を盗めるぞ!レシピを学べるぞ!・・とワクワクした。
ところが、自分のところに回ってくる鍋には、料理が残っていても、塩や洗剤などが入れられた状態でまわってくる。ソースの味がわからないように、つまり味を盗まれないようにするためだ。決して料理人の意地悪ではなく、当時は、自分の料理のレシピは、料理人の存在意義そのもの、極秘にされていた。
全く料理も教えてもらえず、毎日毎日皿洗いに鍋磨きばかり。何人もの少年が、入っても1年以内にほとんどやめていく。このままではだめだ!次第に村上は焦燥していく。村上は悩み迷い、そしてある時心を決める。

紙一重の決断だ!
「よし、日本一の鍋磨きになろう」3年間鍋をピカピカに磨くことを決心する。

当時の鍋はステンレス製ではなくで、とても重い<銅鍋>。その重い銅鍋を、自分の<休憩時間>を使って磨く。2か月かかって、調理場のすべての銅鍋200個を磨き上げる。銅というのは、磨けば磨くほどきれいになる。村上は、自分の顔が映るくらいピカピカに磨いた。

そうして3~4か月する頃には、「今日の鍋磨きは誰だ?」と先輩が聞くようになる。「今日の鍋磨きは<ムラ>です」。そうするとその時だけは、洗剤も塩も入っていない状態で、鍋が回ってくるようになる。鍋屋に村上がいる時だけ、先輩がソースを残したまま鍋を返すようになったのだ。村上はそれを舐めて、ソースの味を覚えた。
きれいなピカピカの銅鍋は使い手にとっても気持ちのいいものだ。村上の心意気が、日本を代表する料理人達の心にとまった。

ある時、「おい、鍋や(村上さんのこと)手伝え・・」調理場から声がかかるようになる。目の前で、すぐ近くで、名人が腕を振るっている。「手伝え」は、実は(よく見て覚えろ・・)だったのだ。

さらに、少しずつ、先輩が秘伝のレシピ、秘密の味付けを教えてくれるようになった。ポテトサラダは、イモが熱いうちにフレンチドレッシングで合えること。シャリアピンステーキの肉は、玉ねぎをおろした汁に肉を漬け込む。玉ねぎのエキスが肉を柔らかくするぞ・・。こうして村上は腕を磨いていく。村上の人なつこさと笑顔がそれを後押しをした。

どんな人も最初はお試し期間がある。その人に「鍋磨き」という仕事を与えた時、その「鍋磨き」をとことん徹底的にやることで、見込まれる。今置かれている状況に、文句を言わずに黙々とやっている人に、神様は微笑むかもしれない。

エピソードを一つ。
帝国ホテル、札幌からやってきた一人の若者が洗い場にいた。彼もまた、もう辞めようと思っていた。
だが、辞める前に少しでもたくさんの鍋を磨いてから辞めようと思った。鍋の外側まで磨く熱心な男だった。村上は彼を見込み、フランスへ料理人の修行に出した。実は彼は鍋や皿を洗う見習いで、料理を作ったことがなかった。しかし村上には自信があった。自分の修業時代が、若いの男の背中にダブッたのかもしれない。
その男は8年の修行を経て、市ヶ谷にレストランを開く。いつしか人気が出て、やがてサミットの午餐会を担当するほどのシェフになった。

転じて、
「4年生の大学を出たのに、コピー取りとお茶くみしかやらせてもらえません。会社を辞めようと思います」・・よくある相談だ。
旅行作家、心理学博士の小林氏は決まってこう答えるそうだ。
「私が上司だったら、コピー取りやお茶くみさえもちゃんとしない人に、他の責任ある仕事は任せないと思います。コピー取りやお茶くみが気に入らないと言っている人は、どんな仕事もたぶんやらないでしょう。何をやっても、自分の責任で、黙々とやっている人、奥歯をかみしめながら、与えられたことをじっとやっている人に、上司は信頼をおくでしょう」。


仕事に行き詰った時、何か一つだけ、意識的に徹底的にやってみる・・わけもなくなりふり構わず一生懸命に・・。
その先に、もしかしたら思いもかけない<意外な展開>が待っているかもしれない。そしてその先は、『神様の領域』なのかもしれない。

辞めたくなると、やめたい理屈で頭の中は堂々巡り。行き場のないストレスに悩まされ、エネルギーを消費する。
どうせならなら、最後の賭けで、何か一つのことを徹底的にやる・・・村上信夫と、その若者がそんな一つの形を示しているような気がしてならない。

今回紹介した村上氏の事例が、万人にヒットするとは夢にも思いません。ただ、閉塞感に悩まされつづけるなら、たった一つの何かに打ち込むことで、何かが開け、何かにつながるような気がするのです。

私は若いころからいろんな職業についてきました。どれもあまり長続きはしませんでした。辞め癖がついてしまっていたのです。実は、司会の仕事もウェイターの仕事も、何度も辞めては復帰しているのです。
そのつらい経験に、やっと目が覚め、今では辞めないで<リフレッシュ>できるようになりました。
その一つの方法が上記のような、考え事ができなくなるくらいに集中して何かをやることでした。自身の部屋を徹底的にきれいにし、汚れたトイレを無心で磨きました。ホテルの大きい料理運びのワゴンを徹底的に磨いたこともあります・・。

人間関係で仕事を辞めたい・・となると、また全く別なアプローチが必要に思います。こちらもまた私は経験豊富です。また近々整理してみたいと思います。

ここまでのお付き合い有難うございました。
辞める前にもう一度トライしてみることをお勧め致します。

参考文献・引用書物・・
「人生を楽しむための30の法則」心理学博士・旅行作家小林静観著
「プロジェクトX 料理人達 炎の東京オリンピック」NHKプロジェクトX制作班著
「帝国ホテル厨房物語」村上信夫著 を、参考にし、引用しています。
by qqbh8530 | 2012-05-11 17:00 | よりよい人生の為に

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by こうちゃん